コラム

光触媒コーティングした外壁や屋根は再塗装できるのか



屋根や外壁の塗装において、光触媒コーティングは長らくの間、扱いが難しいとされてきました。
理由として光触媒の性質上、再塗装には不向きであるという点が挙げられます。
しかし、近年特殊な下塗り材が開発され、光触媒の再塗装が可能になりました。
光触媒コーディングは再び注目を集めているのです。
この記事では光触媒コーティングに関するメリット、塗装および再塗装に関する情報をご紹介します。
 

光触媒コーティングとは

消毒作業
最初に、光触媒コーティングに関する基礎知識を紹介します。
「光触媒コーティング」とは、光触媒塗料を使った塗装のことです。
光触媒塗料には太陽の光に反応して汚れを分解する、セルフクリーニング作用があります。
光触媒コーティングを行えば、対象にセルフクリーニング作用を付与することができるというわけです。
建物の外壁などに光触媒コーティングの働きを応用すれば汚れが付きにくくなり、メンテナンスの手間やコストを削減する効果が期待できるでしょう。
 

光触媒コーティングのメリットと注意点

光触媒コーティングのメリットと注意点をいくつかご紹介します。

光触媒コーティングのメリット

光触媒コーティングのメリットは以下のようになります。
●セルフクリーニング作用
先述の通り、光触媒コーティングの一番大きなメリットはセルフクリーニング作用です。
作用の仕組みは原料である酸化チタンが太陽光を浴びると、活性酸素を作って汚れを分解するというもの。
しかもコーディングによる塗膜は水を弾くため、雨が降った時には分解された汚れも洗い流されるというわけです。

●高い耐久性
光触媒塗料の耐用年数は、およそ16~22年。
紫外線のダメージに最も強いといわれるフッ素塗料の耐用年数が15~20年であることを考慮すると、かなり長持ちする素材だといえるでしょう。

光触媒コーティングの注意点

光触媒コーティングの注意点を補足します。

●無機物は分解できない
錆びや黄砂、火山灰といった無機化合物による汚れに対して、光触媒の作用では分解できません。

●色やツヤのバリエーションが限られる
光触媒は白色顔料の酸化チタンが化学反応を起こして機能するため、白色顔料を含まない濃い色合いの塗料は適合しません。
また、ツヤに関しては5分艶か、もしくは艶消のみに限定される点も覚えておきましょう。
 

光触媒コーティングの見分け方

光触媒コーティングを施すには、予め対象の状態を把握する必要があります。
というのも光触媒に限らず、過去に何らかのコーディング処理がなされている可能性があるからです。
屋根や外壁などに光触媒コーティングがなされているかどうか、素人目にはまずわかりません。プロの業者でも入念な調査を実施するのがセオリー。
そこで、プロが行う調査の段取りを紹介します。

塗装に関するヒアリング

最初に行うのは顧客に対するヒアリング。過去に遡り、特殊な塗装を実施した事実があるかどうかを対話によって聞き取ります。
特に外壁塗装については、フッ素塗膜や無機塗膜かどうかといった点も要チェック。
フッ素塗膜や無機塗膜の場合は塗料が密着しにくく、対応の難易度が上がるからです。

塗装の実地調査

ヒアリング調査を行った後は、実際に目視と手触りを頼りにして実地調査を行います。
ラッカーシンナー(強溶剤)を使い、コーディング素材を拭き取って判断に役立てるという方法も覚えておきましょう。
 

再塗装・上塗り塗装が可能に

従前まで光触媒コーティングの再塗装は非常に難しいとされてきました。
というのも、光触媒と塗料は密着性が低いため、機械的に塗装するだけでは剥がれを起こしてしまうからです。
上記の理由より、近年まで光触媒の再塗装は極めて難しいとされてきました。
しかし、専用の下塗り材「ファインパーフェクトシーラー」の登場により、再塗装・上塗り塗装が可能になったのです。
ファインパーフェクトシーラーについての詳細は後述しますが、光触媒の再塗装のためにファインパーフェクトシーラーを有効に活用するにも、やはり再塗装の事前調査は欠かせないと結論付けられます。
 

ファインパーフェクトシーラーの概要

ファインパーフェクトシーラーは、日本ペイント社が2014年6月に販売を開始した業務用の下塗り材です。
ファインパーフェクトシーラーの正式名は「弱溶剤2液高付着浸透形ハイブリッドエポキシシーラー」。特殊なエポキシ樹脂を採用した接着プライマーと考えればOKでしょう。
ファインパーフェクトシーラーは光触媒に限らず、既存のサイディングにおいて塗装不可能とされていた素材に対して大幅に可能性を広げた、画期的な商品といえます。

ファインパーフェクトシーラーの詳細

ファインパーフェクトシーラーはモルタル、コンクリート木部、スレート屋根に加え、サイディングボードや鉄部等にも対応。下地に対して高い浸透性と含浸補強性を持ち、高い付着力を発揮します。
ファインパーフェクトシーラーが画期的なのは、シーラーの塗料成分に有機成分と無機成分が含まれており、無機・有機双方の下地に対応できるという点。
すなわち無機下地には無機成分が、有機下地に対しては有機成分が付着するというメカニズムを実現しているのです。
従って、窯業系サイディングボードの種類・表面の活性状態によって付着性が左右されることがありません。

参照元:日本ペイント株式会社 ファインパーフェクトシーラー

施工方法もいたってシンプルで、吹付け・ローラー・はけのいずれにも対応。
再塗装・上塗り可能な塗料は水性上塗り塗料や、弱溶剤上塗り塗料全般で、汎用性が非常に高いのも特徴といえます。
色合いは無色もしくはホワイトなので、施工跡が目立つこともありません。
光触媒コーティングの分野においてファインパーフェクトシーラーの登場は、既存の仕組みを大きく変える革新的な出来事だったといえるでしょう。
 

再塗装しなくても良い光触媒塗装のコツ

再塗装の手間やコストを低減させるには、耐用年数がカギとなります。
光触媒塗装と他の塗装方法と比較するため、耐用年数の対比表をまとめました。

塗料の種類 耐用年数の目安
アクリル塗料 5〜7年
ウレタン塗料 7〜10年
シリコン塗料 10〜15年
ラジカル塗料 10〜15年
セラミック塗料 10〜15年
フッ素塗料 15〜20年
光触媒塗料 16〜22年
無機塗料 10〜25年

光触媒の耐用年数は16~22年。
一般的なアクリル塗料やウレタン塗料を使った塗装と比べると、光触媒による塗装は数倍長持ちすることがわかります。
建物の外壁は常に外気にさらされ、汚れや雨風の影響を受けやすい状態にあります。つまり自然劣化しやすいということです。
一方光触媒の場合は「雨によって汚れを落とす」という、特殊な効果を発揮します。一般的にリスクや弱点とされる雨風を克服した点が、そのまま耐用年数の長さにつながっているのです。
すなわち、光触媒の効果を最大限発揮するには太陽光による日当たりを確保することが必要。日照を遮るものを極力排除することがポイントになります。
また凹凸や日陰を生むような、デザイン性の高い家屋は不向きです。
以上より、建物の主要部分が南向きで、なおかつ外郭の造形がシンプルな作りであることが、光触媒コーティングを再塗装の必要性から遠ざけるコツといえるでしょう。
 

まとめ

最後に記事の内容を振り返り、光触媒コーティングに関する要点を以下にまとめました。

  • 光触媒の主なメリットはセルフクリーニング効果があり、耐久性が高いこと
  • 再塗装の際注意が必要
  • 専用の下塗り材を使えば再塗装が可能
  • 耐用年数を延ばすには建物の造形がシンプルで、十分な日当たりを確保できることが条件

光触媒の特性を踏まえ、自宅の環境が適合しているならば、光触媒による塗装は魅力ある選択肢になり得るでしょう。
検討の参考になれば幸いです。